私の生まれたところはここよりも空が広くて太陽が沈むのが遅くて湿度が高かった。雨がよく降った。

私が街を出てから、川が氾濫したり、大きな地震が来たり、そのどちらもが全国ニュースになったり、確かその他にも何個か小さな自然災害のニュースはあって……たぶん……よく覚えてない……で、それで、一度帰りました。

別に、豪雨やら地震やらが理由というわけではなかったんだけど、こうして思い出すと少しだけ鮮明になります。

豪雨より後で、地震より前のことだったと思う。

なんで帰ったんだったかなあ。父親に誘われたんだったか。父方の祖父を施設にお見舞いに行ったのは覚えてるので、それでだったのかなあ。

 

父親が実家と折り合いが悪かったせいか私も祖父母とは小学校に上がったあたりから会ってなかった。10年以上ぶりくらいに見た祖父は痩せて、動作がいちいちぎこちなくて、目がまん丸で、顔や体の皮膚は分厚い皮になって重たそうに垂れ下がってた。元々体の大きな人だったのでそれでも同じ施設の入居者や職員の誰よりも大きくて、父親に聞いてた通りすっかりボケてて、父親のこと、つまり息子のこと、私、つまり孫のこと、は祖父の中からは完全に消えてた。そういったことを自分が忘れてるということに対しても特に思いは持たないらしく、滞在していた二時間くらいの間は、数十分置きに聞かれるあなたたちは何者かとの質問に私たちが続柄を言い、屈託無く「そうですかそうですか」と返される、その繰り返しでした。

 

あとはずっと昔話をしてくれた。

続柄を言うだけの繰り返しの前後を埋めたのは話したいだけの昔話で、これもやっぱり繰り返された。

育った街のこと、手伝わされた仕事のこと、祖母と出会ったときのこと、学校に行きたかったこと。一番よく喋ってたのは学校のことだったなー。

祖父の両親は早くに二人とも亡くなったそうで、親戚の家に引き取られたのが中学に上がる頃?とかで、そこからほとんど学校には行かず、船に乗せられて仕事をしていた。らしい。どうしても学校に行きたくて勝手に抜け出して通学したこともあったけどその度に連れ戻されたとかなんとか。最初、祖父が父のことは忘れているのにそれより遙かに関わりのない母のことはなぜかしっかり覚えていたことが不思議だったけど、これは単純な話で、母が学校の先生をしていたからだろう。実際にその時も、「◯◯さん(母の名前)は学校の先生をしている」と、思い出しては口にしていた。

 

壁に塗り絵が飾ってあった。

最近の趣味らしい。

学ランとセーラー服を着た学生が並んで立ってる絵で、制服はどこかの軍服みたいな深い緑色で塗られていた。その絵を見ながらの何度目かの学校から船に連れ戻された話があり「持って帰ってください」なんて言われて「いいんですか?」とか答えながらも正直いらないなーって感じだったので断り方を考えてた。私が保育園の頃、ムキになった祖父がUFOキャッチャーで全然いらないし全然かわいくないシマウマのぬいぐるみを一時間くらいかけて取ってくれたことを思い出した。数秒後にはもう忘れてて違う話になったので塗り絵をもらうことはなかった。

 

そういう前置きなのですが。

 

何の話をしたかったかって、「フルメタル・パニック! IV」が放送中ですっていうことなんですよ!

すっかり夢中になってしまって、ここ数週間原作を全巻読み返したり前期までのアニメを見返したり4期を何周かしたりしてすごい忙しかった。全部終わってアナザー読み始めたけどなんかもう気が抜けてしまってだめですね。

 

アニメでは先週放送分で「燃えるワン・マン・フォース」編が終わって、この巻は初めて読んだ時から好きだったのでアニメ見る前に原作読み直しておきたくて。

10年……は経ってないかなあ、それくらいぶりの再読でもラストの宗介のモノローグには内臓が圧迫されるような気持ちでした……「極北からの声」を読んだ後に触れる、瀬戸際の「寒い。」は、だってあんなのは、もう、誰だってだめでしょう……

私、フルメタは、当時好きだった二次創作サイトの管理人さんのブログに影響されて「せまるニック・オブ・タイム」が刊行されてから読み始めたんですよね。だから初読当時は高校生で……というのもあるのかなあ、「寒い。」はもちろんだけど、今回は、数々の結果的に選ばなかった命や行動とその結果を指す言葉の断片の中にぽつんと放り込まれた、「学校。」の方に、なんかこう、掴まれてしまったのでした。

祖父のことがあったからかもしれない。

あんなに繰り返してくれた昔話を思い出すこともせず生活をしていたけど。無口な人だったな。

 

本日22:30からの総集編2の放送と4期の最終回までのすべてを楽しみに。

5期絶対見たいのでBOXも予約したよ。

みんなもしてね。

それでは、また。