「Side Kicks!」感想

 

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(2017.5.21 クリア)

すめらぎ琥珀原画の初乙女ゲー(!)ということで初報の時点でほとんど興味本位に近い感情で楽しみにしてた本作。

主線の強い絵を描かれるのでキャラデザともに流行りの乙女ゲーム的なビジュアルではないんだけど、画面の9割がキャラクターの顔アップっていうイベントCGでも顔はもちろん指の筋や髪型の崩れ方なんかの細部の表情の付け方だけで絵に動きが出せるのはさすがだなあと思いました。パッケージや特典の一枚絵よりも表情の振り幅の多いゲーム内イベントCGや立ち絵にハッとさせられます。これがまた差分の数もすごいんだ。私はきれいな顔した男の子の不機嫌そうな顔と退屈そうな顔が死ぬほど好きなのでチカの立ち絵が死ぬほどやばいんですよね……かわいい……

 

お気に入りのイベントCGは、タテワキルートでの葬儀に出席するサイドキックスメンバーのあれと、雨の教会でのチカの、あれです。お気に入りのキャラクターも、チカです。できないこと、が強調されているキャラクターに劣情感込みの好意を抱くのよくないんですけど、携帯の操作に慣れてない&文章を書くことが苦手なチカから送られてくるぎこちないメッセージ文でもうだめだった。『わかりまた すぐに。もどる』だめだった……でも意外とこういう脱字や句点と読点の打ち間違いみたいなのはここだけで、あとは小文字が全部大文字になってるくらいのもので、多分チカも本編中にちょっとずつ携帯電話の使い方とか学んでるんですよね……かわいい……

 

そんな「Side Kicks!」とってもいいゲームでした。VFB的なものも今後出なそうな感じがしたので雑誌掲載のSSを読むためにバックナンバー取り寄せたくらい。本作発売前に同じ会社から同じディレクターさんと原画家さんが組んで出してたドラマCD(ヒガンノハナ)も取り寄せて買ってしまったくらい。一点突破でいいというよりは、満遍なくよかった、ゲームを構成する色んな要素がしっかり噛み合ってた。キャラクターのセリフ部分のテキストがとってもよくて、SS目当てに雑誌買ったのも、絵も音楽もCVも演出も背景も全部いい方に作用してるけど何よりもテキストをいいなあと思ったから。

海外ドラマ風味を意識したゲームなので思わせぶりなことを言う人が何人かいるんですけど、その思わせぶり感のちょうどよさと、上手く言葉にできないことをなんとか言葉にする人たちの、ちょうどいいつたなさと、くどくなくてさっぱりしてるのにどこか影のあるテキストが珍しくて、ほんとーーによかった。色んな人に遊んでほしいなあと思う。

 

続編というよりは同じスタッフでの次回作を遊びたいなぁ、と思ったので文化放送エクステンドの三作目「ハイリゲンシュタットの歌」予約しました。スタッフは違うけど文化放送エクステンド乙女ゲームラインが途切れず続いていって欲しい……という願いを込めて。

 

各ルートとキャラクターについて少し書こうと思います。

 

 

 

共通ルート

 

・メーカーロゴからスタート画面に移行するまでの演出ですでに心を掴まれる。その後の、トラックが店に突っ込んでくるところ、ムービーパートと通常背景と切り替えずに通常背景にトラック突っ込ませててすごかった。どう言えばいいのか分からないけど、掴みはバッチリってこういうことを言うんだなあって思った。以降こういうお金かかってそうな演出が挟まれることはないのですが、冒頭の部分の 「他のADVゲームとはなんか違う」っていう感覚がずっと残るのでその後の意味深なシーンに被せられる海外ドラマ風の意味深な語りやアイキャッチ風演出も自然と受け入れられて、上手いなーと思いました。

 

・選択肢が多い。休憩時間どこいこう?→1つの場所に1人の攻略対象がいて好感度があがる とか 誰のことを聞きたいですか?→攻略対象1人の名前を選べて好感度が上がる とか、この手のオーソドックスないかにも分岐のための選択肢が浮かないくらいに総数があった。冒頭で主人公の血液型を選ぶ選択肢があるんだけど、こういう、好感度の微増以外にお話自体には特に影響のない選択肢っていいよね。キャラ立ちしてる主人公も好きなんだけど、伸縮する人格の形があってもやもやしてる主人公も好き。その伸縮の限度を各ルートのシナリオを通して知るような。そういえばイノリちゃんは今までどうやって生きてきたのかとか家族はいるのかとか全然語られないし誰もそれを気にしない、曖昧な予知夢を見る以外に背景を持たない女の子なんだけど、背景のない主人公が相手だと自分のことを自分で語る系攻略対象がよく映える。そしてSide Kicks!の攻略対象たちはとてもよく自分のことを語ってくれます。自分の心の変化や弱みをそれぞれの言葉で話して聞かせてくれる。バカキャラポジションのチカでさえ自分が相手に何を望んでいたかちゃんと語って伝えてくれるので、みんな頭いいなあと思ってしまう。まあほとんど何が言いたいのかよく分かんないんだけど。でも自分語りってそういうものだから。分かるような分からないような微妙なラインでの攻略対象の自分語り聞くのすごく好きなので私にしては珍しく個別ルートも好きなゲームで、読んでてすごく楽しかったです。

 

・アニメで言う◯◯回的な、攻略対象それぞれに順番に焦点をあてていくような作り。かといって露骨に個別ルートへ結びつくような直接的エピソードは展開されない。チカくらいかなあ。これは個別ルートにも引き継がれる要素なんだけど、共通ルートで各人に焦点を当てている間もちゃんと他のキャラクターたちとの関わりも描かれる。「サイドキックス」という部署とそのメンバーどうしの関係を拠点として話が進められるので、個別ルートに入っても攻略対象と主人公との一対一には終始しない。共通ルートの雰囲気を壊さない個別ルートが好きなので、この点もサイドキックスが好きな理由のひとつです。

 

・全員で事件にあたる中で距離が近付いた二人、っていう切り取り方が基本なので、共犯関係的なノラ・タテワキルートはその点でもちょっとした特別感があった。でも決して贔屓みたいな特別ではなくて、断片でしか見えてなかったレインキラー事件と警察署爆破事件の真相にいよいよ近づいてきたなっていう特別感。共通ルートの雰囲気を壊さない個別ルートがあってこそ、それが崩れ始めるノラ・タテワキルートは読んでて楽しかった。ノラルートからは読む手が止まらなかった。

 

・助手席立ち絵!チカとヒバリにしかないんだけど、すごくよかった。チカが部屋着立ち絵では前髪下ろしてるのとか、細かいところまでちゃんと用意されてる。差分の力を改めて感じました。

 

 

 

チカについて

 

一番最初にプレイしたキャラクター。

シンボルカラーは赤だし初回プレイ公式推奨タイプのメインキャラっぽいなと思って選んだ。これは正解だったと思っていて、各キャラに順番に焦点を当てていく共通ルートの一番最後に展開されるチカメインの事件がそのままチカルートに繋がっていくので、自然な流れのルート分岐とお話の着地を味わえました。

それでさー、なによりもさー、とにかくチカがかわいいんだよー!

チカは、できないこと、が強調されているキャラクターです。故意にそういう見せ方をされているキャラクターのことを好きになってしまう人間というのはいて、まあわたしなんですが……できないことに挑戦してやっぱりできないとこ見ると、脳に血がすごい勢いで昇って頭の中がぐるぐるしたあとじわじわ体温が末端に向けて上昇していく、もうわけがわからないくらいかわいいしかなくなってしまう……チカはかわいい。

孤児で協会育ちのチカ。なので簡単な算数もできないし文字を書くことも苦手で携帯電話のような電子機器も使い慣れてない。自分でもそれは自覚していて、サイドキックスへ勤務しながらアカデミー(警察学校みたいなものかな?)にも通って家でも一般教養の勉強をしている。他のキャラクターたちから、チカ、バカ、チカ、バカ、と言われるチカだけど、大変な努力家なのです。

 

キャラ立てとして面白いなあと思ったのが、チカに対するヒバリの「相変わらず教科書通りだね」ってセリフ。

事件が起こるとサイドキックスのメンバーでそれに対する見解を言い合う場面が多々あるのですが、チカの見立てには必ずといっていいほどにヒバリからこの言葉をかけられる。「アカデミーなんかに通ってるからかな?」みたいなセリフも続いたりする。

チカのような運動能力特化ポジションのキャラクターは細かい観察や推測が必要な場面で役に立つことはあんまりなくて、あるとすれば、とんでもない推測が事件解決に繋がるような展開で、っていうことが多いと思うんだけど、チカの場合はヒバリが言うように誰もが真っ先に考え付くお手本のような見立てをする。

結局ヒバリにその場で細かく否定されていくのでチカの見立てはその事件においては当てはまってはいないんだけど、「アカデミーなんかに通ってるからかな?」の言葉通り、チカはちゃんと日々勉強をしているんだなあっていうのが分かる。

短絡的なキャラとしてのポジションに置きながらもそれを基本的な性格として扱っている。仕事においては経験不足として、でも努力をちゃんと感じさせてくれるので今後経験を積んで補っていくんだろうなあと思わせてくれる。

 

推理サスペンスというのか、こういうジャンルにおいてはチカみたいなキャラクターはプレイヤーに役立たずって思われがちなんだけど、そう思わせないようにさらっとキャラ立てしてくれてるんだよね。そしてそのチカの努力を誰も特別に誉めたりはしないのがすごくいい。教科書通りというのはチカの現在の努力の証でもあるんだけど、ヒバリはその場で役に立たないそれを相変わらずチカはって切り捨てるしアカデミーなんかって言う。でも嫌味じゃない。これはキャラクター間のパワーバランスとか誰か一人が中心となって引っ張っていく組織感をできるだけ取り払った結果だろうなあと思う。

 

あ、あとチカの言葉の変換の素直さがすごく好きです。「でも俺、今、なんか、すっげー嬉しいし、気持ちいい。息してるだけで、嬉しいんだ」 こういう……息するだけで嬉しいチカかわいい……このセリフの前の、朝起きておはようを二回言ってしまうチカもめちゃくちゃかわいいんだよ……チカルートは共通ルートからの流れが一番きれいなので初回ルートキャラだなーなんですけど、最初にチカのかわいさを味わってしまうと他のキャラクターのルートでチカからひらがなてにをは抜けメッセージが届く度にチカがかわいいのはもう分かったから……かわいい……ってなってしまうのでルート外でもチカはかわいい。 『ツカサのことはちやんとおくつた リコきようはよくやすめよ』 『ひとがおおいとけいさついそがしい』 はい、かわいい。

 

 

 

チカルート

 

で、一番印象に残っている場面っていうとみんなそうだと思うんだけどやっぱり雨の教会です。イベントCGもとてもよくて、土砂降りの雨がチカの前髪を崩して涙も鼻水も全部一緒に流れていってしまう。

Side Kicks!のイベントCGは、背景をイベント用に描き起こしてあることがほとんどないからか、構図としてはそんなに面白いものはないんです。最初に一枚見ただけでは何とも思わないことも多いんだけど、差分の数がものすごいことになってる。

イベントCGの弱いところは表情やポージングなど画面が固定されてしまうことで、キャラクターの感情が高ぶっていたり日常とは違う動きをしていてもその気持ちひとつひとつに絵が対応していけないところにある。それを補うのが差分で、このゲームはとにかくほとんどのCGに差分があってしかも1枚あたりの枚数もかなり多い。声と表情とセリフとがきれいに繋がって変化していく。ボタンを一回押すたびにキャラクターの表情の変化に揺さぶられて、もう一回押すともう、好きになってしまうんです。

 

チカルートにはバッドエンドも用意されているんだけど、バッドエンドとの境目になるのもこの雨の教会のシーン。

このゲームはメッセージウィンドウで文字化されないボイスが多用されていて楽しい作品なのですが、チカバッドエンドでのチカの「行かないで」がすごく好きで。聞こうと思って耳をすましても雨音にかき消されてよく聞こえない、目にも見えない、か細い「行かないで」。私はバッドエンドより先に通常エンドを迎えていて、チカから「どっか行けって言ってたけどあの時本当は行かないで欲しかったんだと思う」 って言葉を聞いていたので、こういうことかーって余計にぐっときた。

バッドエンドには好感度の足りないバッドエンドと選択肢ミスのバッドエンドとがあって、私はどちらかと言うと選択肢ミスのバッドエンドが好きなんですが、チカのバッドエンドは後者の方のバッドエンドじゃないかなと思う。ADVゲームなので選択肢で好感度あげるしどっちも選択肢ミスの範疇ではあるのですが。どちらにしても「ここに残る」か「立ち去る」かが、チカにとってもイノリちゃんにとっても大きな分かれ目だったことは、通常エンドルートで雨の日のことを振り返るチカの言葉からも、バッドエンドでのイノリちゃんの結末からも分かる。

タテワキがイノリちゃんに「その行動は自分のためなのかチカのためなのか」を問う場面があるんだけど、この境目の選択肢で「ここに残る」を選んだイノリちゃんは、チカのためじゃないことを認めて独り善がりでもいい放っておけないってその場に残ることを選ぶんです。そしてチカルートの二人は「同じ恐怖を抱えていた」がキーワードになっている。ここで出てくるチカやイノリちゃんの「恐怖」はこのゲーム全体の根底にあって時折顔を覗かせてくる類のもので、最後の Another Side でもイノリちゃんに影を落とします。これはチカルートに限った話ではないのですが、Side Kicks!では、そういう、誰もが持っている恐怖や願いを取り除いたり叶えたりがお話の着地にならないようにしてあります。チカとイノリちゃんの場合も結局最後まで、その恐怖に対して自分はどうあればいいのか、どうすべきか、に答えを出すことはありませんでした。抱えたままであるしかないこと、それでも迷う時は隣にいて欲しいという共有の仕方を望むこと。何が正解かなんて一生分かんないけど、チカもイノリちゃんもお互いに真摯で、その姿に今は、ただよかったと思うだけです。

 

 

 

ヒバリルート

 

バッドエンドが印象的なルートでした。チカのあとヒバリのルートをプレイしたので全員にバッドエンドが用意されてるのかと思ったのにこの二人とタテワキにだけだった。残念。と思うくらいにこの二人のバッドエンドはとてもよかったです。チカのバッドエンドが通常エンドと隣り合わせなら、ヒバリのバッドエンドはヒバリという人そのものと隣り合わせのエンディングでした。

「ヒバリを受け入れる」「ヒバリから離れる」の二つがヒバリルートでの境目の選択肢で、自分を受け入れる人間はヒバリにとっては切り捨てて構わないものに分類されるので、前者がバッドエンド行きの選択肢となります。

共通ルートの項目でも触れた通り、サイドキックスのキャラクターたちはみんな自分の心の変化や弱みをそれぞれの言葉で話して都度聞かせてくれるので例外なくヒバリも通常エンドで後者の選択肢がヒバリを引き止めた理由を語ってくれるのですが、正直ヒバリのその理屈はあんまりよく分かんなかった……自意識と過去こじらせキャラに自分内理屈通した状態で自分語りされると余計によく分かんなくなるみたいなのってあるよね、まあ、ヒバリがよかったんならよかったけど、みたいな。

というわけで何がヒバリを引き止めて何がヒバリを遠ざけたのか、私には最後まで分からなかったんだけど、「ヒバリを受け入れる」方のエンディングってヒバリをなんにも変えないんです。物語開始時より前、ヒバリは職を変えてワシントンへ発とうとしていてその足を止めさせたのがタテワキでした。ヒバリのバッドエンドはサイドキックスを辞めてワシントンへと発つヒバリをサクラダ署前で見送るところで終わります。

最初に、ヒバリを受け入れる→暗転、のシーンを見たときは恋愛ADVゲーム脳なのでこのまま二人依存して欲に溺れるエンディングになるのかなって思ったんだけどそんなこと全然なく、良くも悪くもヒバリはヒバリを受け入れたイノリちゃんに影響されないし左右されない。ヒバリはどうやったら相手が自分を受け入れるか分かっててその通り行動できるんだから、ヒバリを受け入れる人間なんて今までいくらでもいたはずで、これからもいくらでも出てくるんだろうなあって。そりゃそうだよなあって、納得してしまった。

ヒバリバッドエンドは「二人が」どうなるってエンディングではなくて完全に切り離された一人と一人になってしまうエンディングでした。何があったって変わらないキャラクターとか目の前から簡単にいなくなってしまうキャラクターが好きなんだ。

そしてこのエンディング、ヒバリがサイドキックスのメンバーへ別れを告げている時、同時に少女による叔母殺害事件のニュースがテキストウィンドウの向こうでBGMみたいに淡々と流れていて、自分のことで精一杯なイノリちゃんはその少女がシオンだってきっと全然気付いていない。ひとつ崩れたらもうひとつふたつくらい簡単に見失ってしまえる怖さがあって、ここのテキストウィンドウに拾われないボイスの演出もすごくよかった。

ヒバリルートはバッドエンドの方が通常エンドよりも好きです。通常エンドはまあ……というかヒバリルートの最初の方のイノリちゃんの、行為の意味を考えず表面的な笑顔や言葉の気持ちよさだけで嬉しくなってしまうのが、見てて大変つらかった……昔はそんなこと思いもしなかったのでおのれの加齢を感じて更につらかった……

 

 

 

シシバルート

 

シシバもシシバでものすごく今の気持ち語って聞かせてくれるんですけど、ヒバリ以上によく分かんなかった……最初から最後までよく分かんないままでエンドロール迎えた。個別ルート導入部分とエンドロール前にシスイの語りが入ることがあるんだけど、これがなんとなく全部いい感じにまとめてくれて、シシバルートは特にここの語り部分が一際静かで非日常的ですごくよくて、いまいち分からないなりになんとなくよかった記憶が残ってる。「自分がいなくなっても代わりはいくらでもいる」ってセリフはシシバルートのキーだったと思うんだけど、ここはこの後プレイしたリコルートにも繋がっていた。

 

 

 

リコルート

 

カップリングにおける「不在」というキーワードを愛してやまないので、B不在の場におけるA×B前提のBの話をするA+Cというシチュエーションが狂おしいほど大好きなのですがそれと同じ気持ちで別攻略対象の話や名前を口にする攻略対象とそれを聞かされる主人公の構図が大好きです。

リコルート……というか、真相ルートまで終えてもリコのことで一番心に残ってるのが、リコが他のキャラクターたちの名前を呼ぶときの、その声の感じでした。

サイドキックスメンバーの名前のイントネーションはそのほとんどが最後の音で下がるのですが、リコが呼ぶと語尾が上がる上がる↗︎↗︎ そして語尾延びる伸びる→→ 特に、チカ・シシバ・イノリの名前を呼ぶ時が最高かわいい。他の音に例えるなら、口の中で飴玉転がしてる時のコロコロって音。軽やかで甘い、やさしい音。

真相ルートを終えた今は、ヒバリルートの、大丈夫って言ってる人が本当に大丈夫とは限らない、気付かなくてごめん、君は全然大丈夫なんかじゃなかった、っていうのを思ってしまうリコルートだった。

 

 

 

ノラルート

 

ここからが攻略制限ルートです。ノラルートでは主にレインキラー事件に迫ることになります。共通ルートの項目でも書いたんだけど、すっごく面白くてここから真相ルートにかけては読む手が止まらなかった。それも共通ルートの雰囲気を壊さないチカ・ヒバリ・シシバ・リコの個別ルートがあってこそで、だからこそノラやタテワキとの、サイドキックスの外側で結ぶ共犯関係っぽさが楽しかった……

このゲームの、くどくなくてさっぱりしてるのにどこか影のあるテキストが好きなんですが、ノラルートでは通常よりもテキストにほんの少し湿度が増していて、その湿っぽさにもレインキラーに近づいているのを感じられたりしました。読んでて一番楽しかったルートがノラで、ノラも本人以外には伝わらないだろう語りをするんですが、その分からないのにぐっとくる語りだとか、エクストラモードでの後日談の立ち絵の変化のワーって感じだとか、好きなところがたくさんあるのでそのあたりについて。

 

 

「前に聞きましたよね? なんで記者になったのかって。俺は真実を見つけたいって答えました。それは嘘じゃないです。 ただ…… この世に『本当』があるんなら、俺は誰かの中に見つけたいです」

 

Side Kicks!全編通して一番好きなセリフです。嘘が嫌いで真実だけを探しているノラは、それでも、あるのかどうか疑わしいのにその存在に期待することを止められない『本当』を誰かの中に見つけたいって言うんです。……まあ、これだって正直よく分かんないんだよね、ノラの言う本当と真実の違い、なんとなく分かるような分からないような、それすらも分からないのに、ノラからこの言葉を聞いた瞬間にノラのことが見えたような気がしたんだ。気がしたことを信じたい。『本当』は、嘘とも真実とも違う、信じたいこと、なんじゃないかなあって、今は思っています。

 

 

「……痛い?」

「いいえ、大丈夫ですよ」

「大丈夫かどうかじゃなくて、痛いかどうかを聞いたの」

「……まだ、少し痛みます」

 

イノリちゃんとのやり取り。大丈夫って言ってる人が本当に大丈夫かどうかは分からない、とのヒバリの言葉も思い出すけど。

この作品にはこういう、虚勢……というか、構えられた両腕をそっと解いていくようなやり取りが散りばめられていて、いいなあと思う。このあと解放される真相ルートでノラの言うところの真実を探し当てることになるのですが、このゲーム自体が真実へ向かっていくためのゲームで、なので、好きな人の、嘘とまではいかない強がりや気遣いゆえの言葉も放って置かずにあえて優しい強引さで解いていく。主人公の攻略対象たちへの向かい方を作品自体の攻略対称たちへの向かい方として見てしまうので、こういうひとつひとつのやり取りでSide Kicks!への好きを深めてしまいます。

 

 

誰かの中に、『本当』を見つけることが、こんなにも温かいことだとは、知らなかった。知ってしまった俺は、もう、昔に戻ることはできないだろう。それがほんの少しだけ怖いと言ったら、君はきっと、笑うだろう。

 

ノラ攻略後に解放されるエクストラモードの後日談でのノラのモノローグ。

本当を見つけたノラ。このモノローグだけでも最高なのに最後の一言の部分で、それまで笑顔だったノラの立ち絵の表情が変わって、目線を斜め下にそらして口を横にひき結んでる表情に変わります。この表情の変化が、オマケで解放される後日談の最後の最後を笑顔で終わらせずに攻略対称の抱える不安を覗かせて終わるっていうのがさ~~~~もう最高…………

エクストラモードの後日談はどのキャラクターの物も攻略対称視点で語られるのですが、このノラの表情の変化ってきっとイノリちゃんには見えていなくて、イノリちゃんが背を向けている時だとかその場を外した時だとか、そういう、思わず気を抜いた瞬間にしか見ることのできない、滲み出るような不安のひとつなんだと思う。

攻略対称視点だからこそできたし見られたものだった、という意味でもこのモノローグのシーンは好きです。ほんと最高。

 

ノラルートクリアで真相ルートが解放されるのでノラの個別は真相ルートへの引きも兼ねてあります。なのでノラだけエンドロールの後のエピローグシーンが丸々真相ルートへ向けた次回予告みたいになってるんだけど……私はキャラクターが物語の進行のために駒として動かされるのがあんまり好きじゃないのでこういうエピローグの作り方には怒りがちなんですけど……何か今回全然その怒りがなかったんですよね、なんでだろ、加齢かな。最近何でも加齢のせいにしがち。ノラルートのエピローグに関しては本当に次をすぐにプレイさせるための引きでしかなかったしノラの見立て間違ってたし後から思い出してもやっとはしました。でも他にいいものが多すぎて、ノラルート、そしてノラ、それだけで、でした。

 

 

 

Another Side

 

タテワキルート兼真相ルート。

分岐地点じゃなくて共通ルートでのイノリちゃんのサイドキックス加入時から始まります。最後は最初から!

このブログはゲームプレイ中にリアルタイムで投稿してるtwitterのつぶやきを元に文章を足してまとめ直す形で書いてるんですが、真相ルートプレイ中の自分のツイート、わー!とかあー!とかばっかりで何がなんだか分からないので書き足そうにも書き足せない。とにかく楽しかったんだと思う。ほんとに楽しかった。リコの結末自体は悲しいけど、私の中に残っているリコはレインキラー事件の真相とは全然関係ないサイドキックスにいるときのリコだったし、ほどよい距離感ででもちゃんとみんなのことを好きにならせてくれて、本当に本当に楽しかった。いいゲームだった。

 

タテワキルートとしての側面にも触れておこうかな。恐らくこのゲームをプレイした結構な割合の人がタテワキとの恋愛に微妙な気持ちを抱いたことだろうと思う。

全ルート恋愛の過程が性急だとはよく言われているけど、ちゃんと攻略対称たちが分かるような分からないようなの曖昧なラインで自分語りしてくれてたからか私は全然気にならなくて、それでもタテワキとの恋愛は、上司と部下という立場もあってか、恋愛っていうかセクハラでは……ってなってしまった。オールナイト上映をしてる映画館にイノリちゃんの提案で二人で行くのとか、それが共通ルートでタテワキが挙げてた「休暇にやりたい10のこと」の内の達成できなかった一つだったこととか、あの辺りはよかったんだけど……まあ、身内が死んだり悲惨な最期を迎えたとしても事件解決後に主人公とヒロインは笑顔でキスをしてエンドロールが流れ出すハリウッド映画みたいなものだと思えばそんなに気にはならないかなあ。カリフォルニア州の一都市が舞台だし。でもセックスしない大衆映画が好きなんだよなー。Side Kicks!がセックスしない大衆映画みたいであったらもっと好きだったな。とはいえ、気になるところがないわけではないけどタテワキの葬儀のシーンだけで全部巻き返せるからね。

最後、タテワキとのエピローグの後スタート画面に戻った時、全ての始まりの夜のダイナーが、終わりのようにも始まりのようにも見えた。

 

 

  

 

またしても好きなゲームができてしまいました。

サントラも買いました。

今やってるサイドキックス来日のtwitter企画も独特でいいですね。

長いスパンでやってくれてるのも嬉しい。

後はもうVFBさえ出てくれれば思い残すことはない。欲を言うと同じスタッフでの新作ゲームも……

最後にチカへの好きとノラへの好きの違いを書こうと思ってたけどこういう感情を一言で表せる言葉を知っていたことを思い出した。チカは最萌えです。