「Code:Realize ~祝福の未来~」感想

 

 

前作「Code:Realize 〜創世の姫君〜」のFD。
FDだからというのもあるけど、続きが気になって毎日起動して数日で終えてしまう類の熱中はなく、途中で他のゲームをクリアしながら四ヶ月くらいかけてようやくクリアしました。
FDで本編に既存サブキャラ追加ルートを作られて同じ話なぞられてもなあとか個別分岐前イベントが想像してたよりもずっと新規追加のサブキャラメインで見たかったのはそれじゃないのになあっていうズレは感じたけど、もうすっごく好きなシーンがあって、それだけで満足してしまった。そういう作品のことはその一場面だけで大切になってしまうなあ、というのをあらためて感じたゲームでした。ていうかFDっていうのがそもそもそういうものなのかもしれない。
少なくともこれは本編をプレイしていた時にはなかった感情だったしそういう意味でこの作品のことはFDとしてというよりはひとつの作品としてとても好きです。プレイできてよかった。好きな作品なので好きなところを書きます。

 

後日談パート

 

一言で言うと最高だった。
誰のルートが? ルパンルートが!  最高!! だった!!!
上で言ってた「すっごく好きなシーン」があったのはこの、ルパンルートエンドロール後のエピローグです。

ルパンルートはこの作品の実質trueルートであって、なのでルパンというキャラクターは、自分のルートで自分以外の個別ルートの要素を拾いながら、きっかけとなった始まりの約束を果たす、作品の大団円を担当するキャラクター。
なので唯一、カルディアちゃんの毒問題を始めとした全ての問題が解決された状態での後日談が始まるキャラクターでもあります。
ということはもう、後日談という括りの中に見せられるものは二人の日常以外には何もないということで、主人公の抱える問題を解決すること、Code:Realizeを阻止することを主軸としていたゲームの派生作品としては、平穏で平坦なものでした。

 

二人のその後は、私だってルパンをドキドキさせたい!というカルディアちゃんの願いを叶えるために仲間たちが手を貸すところから始まります。
危機的状況に陥れば、とか、やきもちを焼かせよう、とか、まあ色々な協力をしてくれるのですがこの、「ルパンをドキドキさせたい」というカルディアちゃんのかわいい願いは、最終的にルパンの胸に触れて心臓の鼓動を確かめるという至って普通の触れ合いをもって解決します。
平凡でありきたりな答えではあるのですが(起がそもそも、という話でもあるんだけど)ホロロギウムによる体質のせいでどんなものにも触れられなかった前作のカルディアちゃんのことを思うと、平穏で平坦で平和な日常の中でそんな普通の触れ合いに至ることでしか、「あなたに触れてみたい」で始まったこの作品の集大成は務まらなかったなとも思う。
ここで終わったってきれいなお話だったのに、ルパンという人は何度でも最初の約束に立ち返ります。

 

「知りたくないのか? この世界のこと、父親のこと、自分のことは知りたくないのか? 待つことはない。こっちから探しに行けばいい」

 

前作でのその言葉通り二人は英国王室が保管している父親の残した遺品を目的に王立図書館に忍び込みます。この忍び込むっていうやり方にもルパンが表れてたなあと思う。FBでの彼の紹介ページの中に「主人公にとってルパンは最初から最後まで奪い去る者です」という言葉があって、それがすごい好きなんですけど、私が誰のルートをプレイしていてもルパンが出てくると何だか安心してしまうのはルパンがどんなときでもルパンのままいてくれるからだったんだなあ、なんて思いました。
そしてここで父親の遺品である日記をカルディアちゃんが読んだことで最後のエピローグに繋がるのですが、このエピローグがほんとにほんとにほんとーーーに!最高で!!

 

前作でのルパンはそもそも作品の大団円ルートを担当するキャラクターであって、当然今作も個別ルートとしての後日談と大団円としての後日談は兼ねてあります。ルパン後日談を読んで思ったのは、余すところなく書いてこその大団円のその後を改めて書くのはすごく難しいんだろうなということで、ルパン後日談はエピソードとエピソードの継ぎ目が割とあからさまです。ルパンとの日常と父親のことを知ることと「祝福の未来」としての大団円と、独立した3つのお話の詰め合わせみたいなルートだった。でもねえ……好きなんだよね……

 

ノベルゲーである本作のプレイヤーの視点の高さはカルディアちゃんを始めとした他のキャラクター達と基本的にいつも同じものを共有していました。
このルートのエピローグでは、今まで目の前のキャラクターたちの背景として見ていた科学と鋼鉄と歯車の街を、ずっと下に見下ろすことになります。
父親も立ったかつて丘だった場所は今はもうなくなっていて、代わりに、てっぺんに立てばロンドンの全てを見渡せるくらいに巨大な建造物が建てられています。コドリアは全編通してよく空を飛ぶ作品で、これまでだって何度も高いところへ連れて行ってくれたけど今回のこれは今までのどれとも違ってた。今まで見てきた青空と空の色は変わらなくても、それでもこれが一番気持ちよかった。

 

科学は街を蒸気で白く染めて、剥き出しの鋼鉄はセピア色をしている。遠くに浮かぶ飛行船と同じ高さを黒い点の連なりのような鳥の群れが飛んでいき、これまで色んな形の最後を見送る時に何度も聞いてきた音楽にもう一度支えてもらいながら、最後の青空をつたって、サンやインピー、フラン、ヴァンにとっての今日を垣間見ます。大きな目的のために一時的に手を組んでいたかつての仲間たちは、すでにそれぞれの新しい場所を得ていて、それぞれを生きていて。もう一緒にはいないけど誰かのことをふと思い出したり振り返ったりしていて、街を出る人がいれば留まる人がいて、賑やかだった時間が遠くなっていく切なさとそれをしばらくのお別れって言えることの優しさとの背中どうしがくっついていて。これからも都市の中で生きていくけど都市を生かしていくのはこの人たちで、カルディアちゃんの、「今日は皆にとって、大切な区切りの1日になるんだ。」って言葉を思い出す。たぶん、みんな同じことを思っていて、そして誰も口にはしていない。大団円の後日談に選ばれたのはみんなが道を違えていくその日だったんだ。
大切な区切りの1日を祝うようにどこから舞ってきてるのか分かんない白い花びらが二人の頭の上を通り越して、そのまま、今見てきた彼らの生きている科学と鋼鉄と歯車の街に吸い込まれるようにして消えていって…………最後にあって欲しいものすべてがあったよ。

 

祝福の花びらが吸い込まれていったロンドンの街を見下ろす背景には当然既存の絵が使われいるのでFBにもこの背景の掲載はあり、その絵の傍らには、「神のごとき視点の都市全景には人類の驕りさえ描かれているようです」とのコメントもついている。
このエピローグでカルディアちゃんは、かつて自分の父親の指揮のもと、夢と希望と叶えたかった願いとで作られたこの歪な都市のことを好きだって言うんです。
みんなと出会えたって。思い出があるって。
そしてルパンは、カルディアちゃんが好きだって言った街を都市ごと宝石箱みたいだって言うんです。
ここで生きている人たちの思い出や感情が宝石みたいにキラキラ輝いてるって。
機鋼都市ロンドンが美しいのはカルディアちゃんとフィーニスが愛されて生まれてきたから。
カルディアちゃんとフィーニスにもう一度会うために作られた街だったから。
その美しさをカルディアちゃんが受け入れることができるようになるのがこのエピローグ。
この物語は私にとってずっと、最初の約束を果たす物語 でした。
それが、都市に生きて都市を生かす人たちの物語 に変わった。
ルパンルートは何度でも最初の約束に立ち返る物語。
はじまりは最初から都市にあった。
私も機鋼都市ロンドンとそこに生きている人たちのことを大好きになってしまった。
ほんとうにほんとうに最高でした。何度言っても言い足りないね……

 

 

インピー・バービケーンについて

 ルパン後日談エピローグは全部の描写が好きなんだけどなかでも一番好きなのは、インピーの操縦するオーニソプターの羽音が近づいてくるのを聞いたカルディアちゃんの、

 

「この音を聞くと、胸がわくわくする。 いつも何かが起こったときに聞く音だったかもしれない。」

 

本当にそうだったから。
私はルパンがどんな場面においてもルパンでいるところが好きなんですがそれはインピーにも同じことが言えて、インピーのこともとてもとても好きです。
ルパン後日談は高いところへ昇るところで終わったけど、インピー後日談は空から地上へゆっくり落ちていくところで終わるのもよかった。
月へ行くことがインピーの夢で、まだ実現はしていないけどでも、空と地上とを自由な速度で行き来できるのはこの人だけなんだよ。しかも今作でインピーは深海にまで到達します。

 

インピー初登場時のイベントCGを見た時の気持ちをよく覚えていて、閉まっていた扉とか窓とかがパッと外に向けて開いていくように世界と私とが接続された感覚があって、世界の広さへ触れることへのわくわくをくれるのはやっぱり、いつも、インピーだったんです。ほら、ルパンは奪い去る者、闇に紛れる夜の人だから。

好きな人を挙げてもルパンとインピーになるし好きな二人を挙げてもルパンとインピーになってしまう。
FBのキャラクター初期設定案の項目の「ルパン:自分に絶対の自信があるため、基本的に明るく楽天家/インピー:つねに自分に惜しみない賞賛を送っている超楽天家」がもーーー好きで好きでさ……初期設定案なので今の姿とは異なる記述も って前置きしてあるんだけど、この二人のこの部分に関してはそのまんま採用されてると思う。
これを読んだあと、ルパンたちと別れて一人飛行船でアメリカへ旅立つインピーがサイドミラーに映るルパンたちを見ながら「相棒」って呼んだことを思い出すとたまらない気持ちになります。
最初の二人ってルパンとインピーだったんだなあ。
二人が二人に戻ったあとの、賑やかだった時間が過去になっていく少しの寂しさをバカ騒ぎで誤魔化していくような旅を見てみたかった。
ヴァンだったかな、の後日談で、ルパンとインピーが二人でロンドンを出る話が出た時はすごく嬉しかったです。そういう未来もあり得るんだなあって。

 

 

サン・ジェルマンについて

『攻略対象どうし』と並ぶ好きな概念で『◯◯ルートの△△』があって、ルパンルート後日談のサンが好きです。ルパンルートでの経緯が記憶から抜けてしまってるんだけど、ギネヴィアとの会話を見る限り本編ルパンルートでサンは、人としての時間を取り戻すことにしたんだと思う。

人間としてたかだか数十年の短い時間を生きていくことにしたサン。
サン以外の全員がやるべきことややりたいことへ向かっていく姿が描かれる中で、サンは一人静かに庭で紅茶を飲んでいます。
時折まどろみながら、果たすべき義務もなく、使命もなく、サン・ジェルマンという一人の人間として、ただ紅茶を飲むだけの時間を過ごします。
他の仲間たちがそれぞれの道へ分かれていく区切りの日に、その場に立ち止まることを選び、すっかり静かになった庭で、今日の日を思って淹れた紅茶を飲むだけの、優しい時間。名前をつけるなら"退屈"としか言えない、背負うものが何もなくなったサンのためだけの、なんでもない時間。

 

私がルパンルート後日談のサンが好きなのは、奴隷として生まれて短い一生を搾取され、その後はイデアの掲げる使命のために限りない時を生かされてきたサンの、穏やかで退屈な限りあるこれから、そのほんの一端に触れることができるから。
サンがこんなにも穏やかな、自分のためだけの優しい時間を過ごしているから。

サン・ジェルマンの限りあるこれからは、晴れた日には庭で紅茶を飲んだり、日差しが心地よすぎてうっかり冷ましてしまったり、雨の日には本を読んだり、いつ来るか知れない友人のために屋敷を整えておくことに使われるんだろう。
区切りの日にその場で立ち止まることを選んだサンは、いつでも帰って来られる場所であり時間そのものなんだ。

 

FBによるとサンの両腕にたくさん付いている時計の飾りは彼が今まで潰してきた未来の変わり目の時間を刻んだものなのだそうです。
胸に飾った時計に触れながら呟かれる、サンの最後の台詞がすごく好きです。

 

「不思議ですね。未来のことを考えるのが……こんなにも、楽しいなんて――」

 

 

ショルメ・フィーニスルート

本編に時間を戻しての追加ルートですね。どちらもそうなんですが、ショルメルートに関しては特に、まー無理やりな分岐(自分の出自はルパンたちに受け入れられないかもしれない、だから今のルパンたちの優しさが怖い→からの分岐。ショルメたちとはルパンたちと築いたのとは違う例えば利用し合うだけの関係などからの発展を見られるのかと思えばそんなことはなく普通に優しく迎えられていて、ショルメたちの優しさは怖くないの?っていう無理があった)をするので読んでる間中ルパンたちのところに帰りたいという思いが強くなってしまうばかりだった……先に全員の後日談を読んでしまったからというのもあるかも。分岐の間に合わせっぽさが目立って残念だったなあ。
ショルメ自体は、他の攻略対象たちとは違う、「君は悪くないから少しも苦しまなくていい」じゃなくて、「引け目に感じることはないけど苦しんでもいい、君の苦しみを語れる人間が一人くらいいてもいいから」だったのとかはよかったなあと思う。
本編にノーマルエンドみたいなのがあれば自然な分岐も出来たんだろうなあ。まあでもやっぱりルパンたちのところに帰りたかったな……

 

フィーニスルートはよかったです。フィーニスに関してはルパンルートでのフィーニスという存在への幕の引き方も好きだったのでこのルートはなくてもよかったけど、あるに越したことはないしなあ。みたいな。
捕まえられるような形で本編で敵だった人たちと過ごすのでショルメルートのような無理もないし、敵のアジトでお茶会をする奇妙さが楽しかったり、かといってカルディアちゃんが感化されるような展開はなく最後まで弟のために動くのなんかよかったなあと思う。
あ、あとなにより最後のフィーニスを抱きしめるカルディアちゃんのCG、今までで一番カルディアちゃんがきれいだった〜〜!
手のひらの中の大切な宝物の存在を噛みしめるような表情も他では見られないものだった……
ルパン後日談でルパンが都市を宝箱に例えて触れない宝石が詰まってると言ったけど、フィーニスルートでカルディアちゃんは、たったひとりの弟のことだけを、人ひとり抱きしめるのが精いっぱいの体で、宝物のように、自分のすべてで慈しんでいて。
ルパンルートのようなどこまでも視界が広がっていくお話も好きだけどフィーニスルートのような、最後は二人静かに、へ落ち着くお話のことも大好きだなあと思いました。
よかったよ。

 

 

ルパン・ザ・ギャング

 本編共通ルートにて語られなかったお話……という体で本編に差し込まれたお話。
コドリアの共通ルートが好きなので発売前一番楽しみにしていたルートです。
この記事の頭の方でも言ったけど思ってたよりずっと新登場のサブキャラメインでカルディアちゃんも基本的にそのサブキャラと行動するしそうじゃないのになーーって歯がゆいルートでした。
ルパン後日談のサンを見た後だったので最後のドンパチでサンが一人だけ別行動してるのとか、そういうところにグッときたくらいであとはあんまり……専用エンディング曲があってその時用のCGもあるのはよかったです。
コドリアのああいう雰囲気の絵が好きなんだ。

 

 

ドラちゃんのお部屋

最高でした。なにが? miko絵のちっちゃい男の子が!!!

 細かく刻まれたドラちゃんとの日常をショートストーリーとして読めるモードです。
ショートストーリー仕立てなので一つ一つのお話が短く、とはいえイベントCGの数はかなり多く、次から次にドラちゃんのかわいくてきれいな顔が投入されていくのでとにかく目まぐるしかった。

ちいさい男の子が途中で成人する展開が許せないので最後のカルディアちゃん妄想成長後ドラちゃんCGにもそこもちいさいドラちゃんの何かしらの姿であってくれよと思わなくもなかったけど、そこに至るまでの怒涛のドラちゃんかわいいイベントで脳みそが疲れていて驚くくらいあっさり流せてしまいましたね……miko絵がほんとうにすばらしかった、パーフェクトだった……

 

  

 

FDは基本的に義務感でプレイするので最初はそのつもりだったんだけどまさか好きが増すことになるとは思ってなかった。本当によかった。小さい瞬間さえあればその記憶をツギハギにして全てみたいにして生きていけるなって思ったよ。本当に本当によかった。
クリアから今日までの一ヶ月ちょっとの間にアニメのPVが公開され続編の制作が決定されどちらもすごく楽しみで、今、楽しみしかないです。
未来のことを考えるのがこんなにも楽しいなんて、って、私も不思議だよ。

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